マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

マインドファック『パンズ・ラビリンス』

 

パンズ・ラビリンス [Blu-ray]


だから少女は幻想の国で

      永遠の幸せを探した

パンズ・ラビリンス

2006年公開

監督 ギレルモ・デル・トロ

脚本 ギレルモ・デル・トロ

出演 イヴァナ・バケロ
   セルジ・ロペス
   アリアドナ・ヒル
   マリベル・ヴェルドゥ

ストーリー
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スペイン内戦時、妊娠している母親とともに、新しい父親である独裁政権軍の大尉ヴィダルの元へ引き取られた少女オフェリア。
だが、対レジスタンスと生まれてくる我が子以外に興味を示さない冷徹な義父やそれにオドオド従うだけの頼りない母親、唯一話せる家政婦のメルセデスも弟とともにレジスタンスに内通している。
そんな現実から逃避するかのように自然とオフェリアの心はおとぎ話の世界へと引き込まれていく。
そんなある日、オフェリアの前に妖精が現れ、彼女を森の奥の迷宮へと導く。そこには迷宮の番人の「パン」がおり、オフェリアを地底の王国の姫君と呼ぶのだが──。
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恐らく多くの人がパッケージでオズやアリスのような子供向けファンタジーと思い込んだでしょう、ギレルモ・デル・トロ監督のスペイン内戦を舞台とした幻想ダークファンタジー。カンヌ映画祭22分間にわたる拍手を受けた逸話はもはや語り草。

ギレルモ監督といえば最近では『パシフィック・リム』のヒットが記憶に新しいですが、本作はそれでギレルモ監督=特撮系アクション監督という印象を得た純粋なロボットファンのボーイたちがパシフィック・リム』の延長で見ればドン引き間違いなしの徹底した残酷な話になっています。

まず何より「ファンタジー」なのに「現実の存在が大きい」のが残酷。「不思議の国のアリス」は「現実逃避」の話だとテリー・ギリアム監督は『ローズ・イン・タイドランド』で唱えましたが、本作では過酷な現状を変えれると聞き、「不思議の国」を探検するオフェリアの裏で、事あるごとにドロドロと繰り広げられる戦時の「大人たちの人間模様」が顔を出します。オフェリアにとってはその「大人たちの人間模様」こそ最も逃避したい存在であり、変えたい「現状」であるにもかかわらず、常に彼女を巻き込み生々しいやり取りが進展されていく様は、本当にこれは「ファンタジー映画」なのかと疑りを掛けたくなるほどに「現実的」です。

そして肝心のファンタジー描写も、子供の悪夢を大人の悪乗りで過激化したような、生理的にゾッとするような演出が多く、センスの良さと同時に、現実世界以上の恐ろしさを醸し出しています。特に中盤に登場する食児鬼「ペイルマン」は外見のデザインもさることながら、子供を嬉々として食べようとする、ペドフィリアをさらに歪曲したような性質と不気味な動きでトラウマものの存在感をアピールしています。

現実世界では間接的な「残酷」を、ファンタジー世界では直接的な「残酷」を放つ、一度で二度美味しい(?)構成、「ダーク」ファンタジーの何たるかを思い知らされる快作と言えるでしょう。

 

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食児鬼手の目ペイルマン。もはや本作の顔と言っていいでしょう。

TSUTAYA