マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

現在観ても遜色なし!? サイレント時代のきぐるみショー

なんだかんだで映像黎明期の作品というのは驚かされるものが多いですね。
技術面ではどう考えても今の時代の方が圧倒的に上なはずなのに、撮る対象のユニークさ、前例がないからこその独創性、そして基準もないからこその異様に凝ったギミック等々、見せ物として全く見劣りしていない良作の何と多いことか。
というわけで、今回も趣旨とは離れますが、そんな良作の一つ1907年作「ピッグ・ダンサー」を紹介します。

豚が踊る!豚が脱ぐ!!愛嬌?全開ぶたぐるみ!


Le Cochon Danseur - O Porco dançarino (1907 ...

 

どうですか、きぐるみショーの「き」の字も存在しない戦前時代においてこのクオリティ。
きぐるみは他の衣装とは違い、「擬人化した別生物」を演じることを強要されるわけですから、それに見合ったボディランゲージの機微が求められます。この考え方自体は日本でも古くは獅子舞の動き方などに見られるように昔からあったものですが、本作のような「愛嬌」を振りまくことを目的とした「モダンチックなきぐるみ」での動き方を追究したのはこれが初めてではないでしょうか。
チョコチョコと手を動かし、寸胴な体を「一生懸命」に揺らして愛くるしさをアピール。現在のきぐるみ像のひな形といっていい動きです。
そしてなによりこのきぐるみの作り込み、ぶよぶよとした体躯に短い手足、まばたき可能のまぶたにとびだす舌、極めに剥きだせる無駄にリアルな牙。1930年代のミッキーマウスが↓のクオリティであることを考えるといかにこのピッグダンサーが作りこまれているかが分かります。終わりに顔アップできぐるみのギミックをこれでもかと見せびらかせているあたり、作った当人たちもその自負はあったようです。何せ肉屋のマスコットとして現代で登場させても何の違和感もなさそうな出来ですからね。