マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

マインドファック『THX 1138』

THX-1138 ディレクターズカット 特別版 〈2枚組〉 [DVD]

ここは未来 愛を罪とする未来

THX 1138

監督 ジョージ・ルーカス

脚本 ジョージ・ルーカス
   ウォルター・マーチ

出演 ロバート・デュヴァル
   マギー・マコーミー
   ドナルド・プレゼンス
   イアン・ウルフ

ストーリー
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人が機械に管理されるようになった25世紀。人々は地下都市で黙々と「消費」と「発展」の為に精神安定剤を服用しながら働く毎日を送っていた。
ある日、THX-1138は女性ルームメイトのLUH-3417の勧めで薬の服用を止め、感情のままLUH-3417と肉体関係を結んでしまう。
しかし、情緒的行動を罪とするこの社会で性行為は重罪。彼ら二人は追われる身となってしまう───。
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ジョージ・ルーカスの描くディストピア

機械が支配する反人権主義の未来社会から脱出を試みた人々の逃避行を描くディストピア(反理想郷)作品。

ジョージ・ルーカスのデビュー作であり、監督の大学時代に制作した『電子的迷宮/THX 1138 4EB』のリメイク。

ディストピア作品の肝はどれだけ住みたくない世界を想像できるかにあるわけですが、流石ジョージ・ルーカス、後に皆が憧れる理想の未来世界を『スターウォーズ』で作っただけあって、皆が嫌がる未来世界も手堅く作っています

薬漬けで感情の起伏を抑えられ、ひたすらロボットの組み立てを行い続けるという、どっちが機械だかわからない生活を送らされる人々。自販機のように町中に配置され、半ばカウセリング室となりつつある懺悔室もよく見ればジーザスの顔が入った絵と録音テープが流れるだけのコノヤロウ仕様

そして「藥物ダメ、ゼッタイ」で正気を取り戻し、街からの脱走を試みれば、遂に狂気のクロムロボットが出撃。

このクロムロボットがある意味曲者で、時に子供を養育するというドラえもんレベルの高性能っぷりをアピールしたかと思えば、突如廊下の壁に何度もぶつかり続けるというアシモ、いやAIBOレベルの問題を起こしたりと、ハイテクなんだかポンコツなんだか解らない謎の不気味さを持っています。

そんな彼らも終盤、THXが車で地上への出口を目指している事を知れば、スクランブル!スクランブル! 颯爽とバイクに跨がり追いかける、白バイ警官さながらの勇姿を見せてくれます。まあ、すぐにクラッシュするんですけどね

しかし真面目な話、物語自体は結構陰惨で、THX達からしてみればディストピアとはいえ社会からはじき出されること前提の逃避行なので、終始希望が見えてきません。「地上はヤバイ」という情報が尚更その不安を増長させます。

ですがそんな七難八苦を乗り越えた主人公が迎えるエンディングは完璧で、荘厳なオーケストラが流れる中、広大な大地と巨大な夕焼けの前にTHXのシルエットが立ち尽くし、余韻を壊さない様にクレジットは右下に、そっと表示させる。正直ここまで映画と一体化したエンディングは観たことがありません。このエンディングを観るためだけでも本作を試聴する価値は十分にあります。

 

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バイクを華麗に乗りこなすクロムロボ。ハイテクッ!!

 

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誤作動で壁に当たり続けるクロムロボ。ポンコツッ!!