マインドファック『コックと泥棒、その妻と愛人』
欲望...殺人...デザート。ボナペティ!
コックと泥棒、その妻と愛人
1989年公開
監督 ピーター・グリーナウェイ
脚本 ピーター・グリーナウェイ
出演 リシャール・ボーランジェ
ヘレン・ミレン
マイケル・ガンボン
ストーリー
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とある高級フレンチレストラン。一流の腕を持つコック、リチャード(コック)により目覚ましい繁栄をとげていた最中、
いつもの通り、恐らくはいかがわしい商売で地位を得たのであろうオーナーのアルバート(泥棒)が手下と美しい妻ジョジーナ(その妻)を連れて今日も食事に来ていた。
店に似合わぬ、下劣な言葉で食卓を汚し、気に入らなければ誰であろうと手痛く辱める彼の態度は、日を追うごとに熾烈になっていった。
そんなある日、ジョジーナは同じ常連であったマイケル(愛人)と恋に落ちるのだが…。
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世界一美しい調理場、世界一汚い食卓
高級レストランで起きた不倫騒動が、とんでもない狂気の沙汰へ盛り上がっていく様を描いた作品。
豪華絢爛な食卓。いかにも美味そうな料理の数々。広く間取りされた空間に皿洗い少年のボーイソプラノが響く、恐らくは世界一芸術的な調理場。ビジュアル映画を彷彿させるセットの数々は、正にこれからお上品な映画を流しますよと言わんがばかり。
ところがどっこい、そんな優雅な舞台で繰り広げられるのは世にも泥臭く醜い下品の嵐。
食材の上で交わったり、腐った肉が詰め込まれたトラックに乗って逃げるなんてのは序の口で、本作で最もえげつないのが曰く「泥棒」曰く「粗野を絵に描いたような男」である、マイケル・ガンボン演じるアルバート・スピカの存在。実質この男の横暴っぷりで物語は進んでいるようなもので、ひたすらこいつの悪逆非道っぷりを見せつけられることになります。
冒頭で、従業員を犬のクソまみれにしたと思えば、妻のジョジーナの態度が気に入らないと暴行を加えたり、店を貸しきるために他の客を辱めた上で追い出したり、挙句の果てに子供にまで酷い仕打ちをする始末。
こうなると流石に視聴中、何故ここまでデブ親父の不愉快な暴力シーンを見せられにゃならんのだ!『ファニーゲーム』じゃねーんだぞ!!と言いたくなりますが、視聴後は全て伝説ともいうべきラストの報復劇でカタルシスを得るためだったんだと納得してしまいます。不思議。
その報復にしても、やってることはイカれているにもほどがあるのですが、「相手がアルバートだからいいや」と当然のように思えてしまうのは、暴力シーンを大胆に取り入れた監督の計算の成果でしょう。
「泥棒」ことアルバート・スピカ。胸クソの悪さはピカイチ。
報復に「これ」を食べてもらう!!