マインドファック『ローズ・イン・タイドランド』
ギリアムのアリスは孤独の迷宮をさまよう
2005年公開
監督 テリー・ギリアム
原作 ミッチ・カリン 『タイドランド』
脚本 トニー・グリソーニ
テリー・ギリアム
出演 ジョデル・フェルランド
ジェフ・ブリッジス
ジェニファー・ティリー
ブレンダン・フレッチャー
ストーリー
──────────────────────────────────────────────────────
想像力豊かな10歳の少女ジェライザ・ローズはジャンキーの両親と不安定な生活を送っていた。
ある日、彼女の母が急死し、それを機に父ノアはジェライザを連れ彼女の祖母の家へ行くことを決める。
長旅の末、辿り着いた先は、祖母の家こそボロボロで祖母も死んで久しかったにしても、美しい大草原の広がる自然あふれる土地であった。
彼女はそこで、想像力を駆使して独自の世界を築き上げていくのだが…。
──────────────────────────────────────────────────────
「バンデットQ」「未来世紀ブラジル」のテリー・ギリアム監督による孤独と悲惨に彩られた現代版不思議の国のアリス。
子供の空想をそのまま練り固めたような世界観が魅力的なのか、数々の媒体でリメイクされ続ける不思議の国のアリスですが、近年ではダークな面をクローズアップさせようとする運動が流行りなようで、メルヘンなイメージのアリスはすっかり息を潜めています。
本作もそんな「ダークアリス」の系統を受け継いだ一作ですが、奇才ギリアムのフィルターを通した結果、他のどのアリスよりも「悲壮感」を重視した内容となりました。
開幕早々に薬で母親が死ぬ展開もそうですが、本作の「アリス」ジェライザ・ローズは10歳にしてあまりにも過酷な人生を強要されていきます。そんな数々の不幸に耐えるため、彼女は自分だけの「不思議の国」を構築し、現実を必死に緩和しようとします。
ギリアムのお得意の異次元描写もあってか、その彼女の築く「世界」は希望と孤独と「忘れられない現実」を入り交えた、正に「無邪気な悪夢」といえる姿を成しており、眼を見張るものになっています。
過酷な現実が進む一方で完成されていく「理想郷」、これが現実の「アリス」だと言わんがばかりの重厚なメッセージ性は、さすがテリー・ギリアムと言えます。