マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

マインドファック『トラウマ』

コリン・ファース トラウマ [DVD]

あなたが信じて見るものを信じよう

トラウマ

2004年公開

監督 マーク・エヴァンズ

脚本 リチャード・スミス

出演 コリン・ファース

   ミーナ・スヴァーリ

   ナオミ・ハリス

   ショーン・ハリス

   ニール・エドモンド


以前私はマインドファックとは「混乱を促す映像表現を使う作品」と説明しましたが、
正確にはちょっと違います
そもそもマインドファック自体、映画だけに限ったジャンルではありません。
投稿写真等、一種のミームとして様々な所でその姿がみてとれます。

マインドファックは書いて字の通り、脳を犯されたような理解不能な事象、精神的で退廃的なイメージ、夢や幻覚のようなビジョン、シュールリアリズム的な表現等を感性に身を任せて楽しむ、というのが本来の概要になります。
しかし、日本の“わびさび”に匹敵する曖昧さを持つのがマインドファックで、

個人の感性によって、この基準も変化します。

ですから映像作品でもハッキリとマインドファックと言えるものはこれまで

ジェイコブズ・ラダー」と「裸のランチ」位のものでしたが、
この度やっと第三の候補を発見しました。
それが本作『トラウマ』です。



ストーリー
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交通事故で妻を亡くした主人公ベンは、人生をやり直す為に元廃病院のアパートに引っ越したが、その先で様々な謎の幻影に襲われていく…。
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サスペンスやホラーの要素も有るものの、飽くまでメインはマインドファック
ベンのトラウマを刺激するかのように嫌らしく、そして執拗に接触してくる幻覚の数々はミュージシャンのPVがごとく洗礼された映像演出によってその異様さを際立たせます。

そして、その雰囲気を費やさないために、頻繁に不安を煽る、斜め撮り等のカメラアングルを使用しているのも評価点。
構成も良く、現実と幻覚の区別がつかなくなる展開は、実に自然な形で行われ、
展開が一つ進む度に「どれが幻覚なのか」考えさせてくれる、ミステリー要素も素晴らしいです。

そして、何より私が個人的にこの映画が好きなのは「ジェイコブス・ラダー」の演出がリスペクトされているからです。

 


上の映像は「ジェイコブス・ラダー」のとあるシーンから。

この脚のない黒人?男性の異様な痙攣とも振動ともつかない、狂気をボディランゲージで表現したような動き、登場は一瞬ですが、本編で凄まじいインパクトを残しました。
仮にこれを「ジェイコブスダンス」とでも名付けましょう。

狂気と恐怖を表現するのにこれほど優良な身体演出を私は知りません。
マインドファックというジャンルを表現した演出としてもといっても過言ではないでしょう。
『トラウマ』に登場した「ジェイコブスダンス」は実に「この監督わかってるな演出」として長々とその存在を見せつけてくれます。


私はあえて本作を万人向きの作品とは言いません、
しかし自分の感性を磨くという意味では、一見の価値は絶対にあります。

TSUTAYA