マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

マインドファック『ドニー・ダーコ』

オリジナル・サウンドトラック盤“ドニー・ダーコ”

 「世界の終わりまで 

   あと28日6時間42分12秒」

ドニー・ダーコ

2001年公開


本作『ドニー・ダーコ』は「世界の終末」をテーマにしたマインドファック作品です。
「世界の終末」と言えば「2012」ノストラダムスやマヤの暦、そして古くは聖書から続く終末論を引用したパニック映画を連想しますが、本作はそんなガチャガチャした雰囲気は皆無で、むしろその「世界の終末」とは何か!?というミステリー部分に重点を置いた、新しい視点の映画となっています。

あらすじは

  • 少々精神を病んでおり、医者にかかっている点を除けば、ごく普通の高校生ドニー・ダーコ。彼はある晩、謎の声に誘われゴルフ場に向かう。するとそこにはフランクという名の銀色ウサギの着ぐるみがおり、「世界の終わりまで28日と6時間と42分12秒しかない」とドニーに告げる。
    そして翌日ゴルフ場から帰ったドニーが見たものは、飛行機のエンジンが墜落して半壊した自宅であった…。

まずたひたびドニーの前に顔を出し、難解な言葉を残す、DVDのジャケットにも全面的に押し出されている、銀色ウサギのフランクが印象的。ウサギとドクロをかき混ぜたような顔と、市販でどこにでもありそうなボディの着ぐるみは安上がりそうなのに、全くチープさを感じさせません。
素材の味を生かせる作風、というべきものでしょうか、むしろこの安っぽさがないとダメ、と思わせてしまうのに監督の力量の高さを感じます。

そして、この映画はタイトルが示す通り、主人公ドニー・ダーコを基軸に添えた物語です。
しかしドニーは前記したように「バットマン」や「スパイダーマン」のような物語の基軸になるべき要素を備えているわけではありません。
彼はただフランクの示した「世界の終末」の謎に関心を持っているに過ぎません。
では何故『ドニー・ダーコ』なのか、
それはこの「世界の終末」がドニーにとっての大きな分岐点に過ぎないからです。
終盤、「世界の終末」からドニーはある決断をします。
その決断は物語内のドニーの行動の総合からの成長を示唆しており、この物語自体がこのドニーの決断までを映した「ドニー・ダーコの物語」であることが判明します。
SFやミステリー要素を取り入れ難解な世界観を構築しながら、その裏で主人公の成長という物語の基盤を丁寧に描き上げた、手堅い名作と言うべき作品です。

TSUTAYA