マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

マインドファック『2001年宇宙の旅』

2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

いざ 畏怖と謎の唯一の旅へ

2001年宇宙の旅

1968年公開

監督 スタンリー・キューブリック

脚本 スタンリー・キューブリック
   アーサー・C・クラーク

製作 スタンリー・キューブリック

出演 キア・デュリア
   ゲイリー・ロックウッド
   ウィリアム・シルベスター
   ダグラス・レイン

 

ストーリー

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人が宇宙にある程度進出できるようになった時代、アメリ合衆国宇宙評議会は、突如月面から発掘された、人工物としか思えない黒い石板「モノリス」を調べるため調査団を派遣した。
しかしなんの変哲もなさそうなこの物体に調査団は頭を悩ますばかりであった。
そんな時、ふと400万年ぶりに日光が当たった「モノリス」は木星に向けて強力な信号を送った。
その18ヵ月後、木星探索に向かう宇宙船ディスカバリー号
デビッド・ボーマン船長率いる探査隊は「完全な」人工知能HALLのサポート得ながら順調に木星に向かっていた。
しかし、ある時HALLがなんとミッションそのものに「疑問」を持ち始めたと話しだし───。

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黒い石版(モノリス)と《ツァラトゥストラはかく語りき》のBGMを持って進化を謳いあげたシーンがあまりにも有名な、壮大なSF超大作。
宇宙の荘厳さを全体に醸し出している本作は、まるで地球は青かった」と言ったユーリィ・ガガーリンの当時の感覚をそのまま映像化した様。無論時代が時代なのでCGなんてものはありませんが、キューブリック監督のこだわりぬいた特撮で作った宇宙船は、特撮至上主義が未だに根強く残るのも納得できるほどのリアリティがあり、現在の視点で観ても全く見劣りしません。
キューブリック監督は『時計じかけのオレンジ』からでも分かる通り演出に独特の手法を用いますが、本作もその例に漏れず、猿が進化するまでの話から始まる冒頭や、途中に挟まれる休憩時間(文字通り)など、初見ならポカンとしてしまうような演出を当たり前のようしていきます。しかし、キューブリック監督がすごいのは、この様な(ある意味)奇抜な演出用いつつ、ちゃんと話の本筋は通しているところにあります。観客が細かい演出に一時混乱しても、話の大筋さえ、掴ませていれば、後は個々に脳内補完してくれることを監督はよく理解しています。
これはマインドファック全般にも言えることで、話の概要を中途半端にしておくと、どんな奇想天外な演出もただの「説明不足」に終わってしまいます。よほど魅せるビジュアルアイディアがない限りは話を伝える構成はしっかり持つべきでしょう。
尚、本作は「生命の進化の行く末」をその話の本筋にしており、とてもじゃありませんが簡単な内容とは言いがたく、それこそ「説明不足」と認識される可能性が高くなる題材と言えます。しかし監督はモノリスを代表する印象的な造形美を意味深に映像内で展開させることで、宇宙的荘厳さを保ちつつ、「進化」に具体的なイメージを定着させ、視覚的に観客が置いてけぼりになりきらないように構成しています。
「進化」というテーマが浮き彫りになる終盤までの流れも良く、ゆったりした展開は宇宙空間にマッチしており、マードックとHALLとのやりとりも、人間が宇宙に出るに足るものなのかという疑問符を投げかけられているようで、単なる繋ぎに終わりません。
この手の哲学的SFを観る人がもつでしょう「なにかすごいものを観たい」というニーズにもキッチリ答えてるので、興味が湧いたら是非とも視聴をおすすめします。

TSUTAYA