マインドファック『プレステージ』
130分すべてを疑え!
天才vs奇才 世紀のイリュージョンバトル
2006年公開
監督 クリストファー・ノーラン
出演 クリスチャン・ベール
ヒュー・ジャックマン
マイケル・ケイン
スカーレット・ヨハンソン
ストーリー
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19世紀末のロンドン。マジシャンのボーデンはライバルのアンジャーが世間を騒がしているマジックのタネを知るために彼の舞台下へと忍びこむ。だがそこで彼が見たものは、鍵のかかった水槽で溺れ苦しむアンジャーの姿だった。
急ぎ水槽を破壊しようとボーデンだが、時すでに遅く、あまつさえ、その場を目撃され彼はアンジャー殺害の容疑で逮捕され、死刑を宣告される。
そして獄中ボーデンはアンジャーの日記を手渡され、事件の秘密があるかもしれないと、日記を読み始める。そこにはそこにはボーテンとアンジャーの長きに渡る戦いの全てが書かれていた──。
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人生を賭した奇術師達の奇妙な戦い描いたトリックサスペンス。
ボーデンの手記を観るアンジャーの日記を読むボーデンの回想からの始まりという、しょっぱなからわけがわからなくなる構成がとても印象深い。
騙し喜ばす事を生業にする奇術師(マジシャン)をテーマにした映画の中では一番奇術的かつ現実的。現実的というのは単にマジックを細かく描写しているという意味だけではなく、マジックという「幻想的」空間を作り出すことにおいて奇術師が最も必要とするものは、「種」「仕掛け」であるという「現実的」事実を軸に話を展開している点も指しての言葉です。
有名な鳩のマジックに関わる試行錯誤など古典マジックの裏話など小ネタも面白いですが、どちらかといえば、摩訶不思議な奇術の数々の応酬を楽しむというよりも、その奇術をライバルを陥れる一心の元に開発していく、主役達がどう傷付き、どう報われ、どう成れ果てていくかという、「現実的」な人間の業こそ、今作のメインと言えます。
ただ「勝負はよりそれに人生を賭けたものが勝つ」という強烈ながら共感してしまう今作のテーマを、教訓にするべきか、反面教師にするべきか、曖昧なままに提示しているのは、実に「幻想的」で「奇術的」でした。