マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

『ドッグヴィル』 ~体育館とチョーク線!? 舞台は整えた!!~

ドッグヴィル コンプリートBOX [DVD]

美しき逃亡者があらわれ

     一つの村が消えた

ドッグヴィル

2003年公開

監督 ラース・フォン・トリアー

脚本 ラース・フォン・トリアー

出演 ニコール・キッドマン
   ポール・ベタニー
   ローレン・バコール

 

ストーリー──────────────────────────────────────────────────────
ギャングの手から逃れ、寂れた鉱山村ドッグヴィルへと逃れてきた美女グレースは、そこで作家を夢見る青年トムに出会う。
彼は、彼女に一目惚れしたことから、この町に滞在できるように手引きする。
しかし、偏屈な村の住民は、ギャングから追われる彼女の受け入れを快くは思わない。
そこで、グレースは彼らの身の回りの手伝いをすることで親睦を深めようとする。
献身的なグレースの行いに、一見心を許したように見えた村の住人たちであったが、
それをいいことに、次第に要求をエスカレートさせていき…。

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都会人の持つ田舎へのあこがれを元手に、人の性根と場所の無関係性体育館にチョークで枠組みしただけの驚きの安上がりセットドス黒く説いた驚きの社会風刺映画。
演劇の舞台が如く、異常なまでにセットがシンプルな分、観る対象が役者に限定されるだけに、役者の演技力が光る仕組みになっている本作。この独特のスタイルは人の内面に重点を置く必要がある本作のコンセプトに見事にマッチしていおり、最大の想像力を観客に求められる本作の舞台もその役者の演技力のお陰で10分も観る頃にはチョーク線の囲いだけのセットが本当の村に見えてきます、そして半分も観る頃には本当の腐った村に見えてくるから不思議着なものです。
作中受け入れられたい一心で村人の卑劣を極める責め苦を小公女かシンデレラが如く文句ひとつ言わず耐えしのぐグレース、彼女の姿は本国の価値観からすれば「全ての罪を許す」キリストの再来とも言えましょう。しかし、そんな許しを是とするキリスト教美徳に対してアンチテーゼを投げかけるのが本作最大のテーマであり、理想の追求が必ずしも現実に結びつく訳ではなく、単なる自己満足になってしまってはないかという、我々の根底にある価値観の再評価を問いかけてきます。

見終わった後に、何か重いものが心に伸し掛った様な感じになる、社会風刺としてはこれ以上ない仕上がりを見せた逸品です。

TSUTAYA