マインドファック『バートン・フィンク』

天国と地獄の間にハリウッドはある

バートン・フィンク

1991年公開

監督　ジョエル・コーエン

脚本　ジョエル・コーエン
　　　イーサン・コーエン  

出演　ジョン・タトゥーロ
　　　ジョン・グッドマン
　　　ジュディ・デイヴィス

仕事人として専門業を生業にしている人々にとって「スランプ」ほど恐ろしい言葉はありません。
この、俗に言う「産みの苦しみ」というものは、成果を出せない、故に仕事が減る、故にストレスで仕事に性が出ないのジレンマによる悪循環が曲者で、多くの職人作家が悲鳴をあげてきました。
しかしジョエル・コーエンとイーサン・コーエンのコーエン兄弟による本作『バートン・フィンク』はそれを逆手にとり、「作家のスランプ」をテーマに「作品」として見事な昇華を成し遂げました。

ストーリー

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ニューヨークの社会派劇作家バートン・フィンクはある日ハリウッドの大手スタジオから脚本執筆のオファーを受ける。
しかし、いざ仕事を引き受けハリウッドへ来てみると、スタジオの社長はバートンの意思を聞かずウォーレス・ビアリー主演のレスリング映画の脚本を強要する。
引っ越した先の嫌に蒸し暑いホテルで、馴れないテーマで執筆に苦心するバートン。
そんな折、ちょっとした騒音問題から隣人のチャーリーと意気投合するが…。
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物語はバートンがチャーリーを始め、奇妙な人々と出逢い、奇妙な事件に巻き込まれながら、その経験を元手にスランプを脱出していく様を描いています。
本作は製作のコーエン兄弟が前作『ミラーズ・クロッシング』の製作中における血と汗と涙の実体験を元に作られており、スランプ時の作家の、自分のこだわりと仕事の内容との差などの苦悩を実に鮮明に再現しています。
スランプに陥った作家は全く新しい経験から刺激を受けて脱出を謀ると聞きますが、本作のバートンは、ここまで来たら逆にトラウマにならないか？と思いたくなるほどの経験から自分の作家性を問い直します。
恐らくは、それぐらいの刺激がなければスランプなんか抜けることはできない、スランプと言うものはそれだけ深刻なものなんだ、というコーエン兄弟の強い主張が込められているのでしょう。
そして実に手厳しいラストの展開もまたコーエン兄弟の血と汗と涙からくるものなのでしょう。

TSUTAYA