マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

マインドファック『アメリカン・サイコ』

自分をコントロールできない

アメリカン・サイコ

2000年公開

監督 メアリー・ハロン

脚本 メアリー・ハロン
   グィネヴィア・ターナー

出演 クリスチャン・ベール
   ウィレム・デフォー
   ジャレッド・レト
   ジョシュ・ルーカス
   サマンサ・マシス
   クロエ・セヴィニー
   リース・ウィザースプーン

人間社会をやっていくなかで、どうしてもつきまとってしまう問題といえば「ストレス」があげられます。
特に人が集まる都会では、そこに溜まるストレスの量もかなりのものです。
ですから、私達は生きていくうちにそのストレスを回避する術を、半ば本能的に会得していきます。
しかし、自然に身に付けるその術も、目を凝らして見れば、実に不自然なものであるかがわかるはずです。
本作『アメリカン・サイコ』は、そんなストレス社会を生きる人間の洗礼された、且つぎこちない処世術を恐ろしく滑稽に描いた作品です。

ストーリー

──────────────────────────────────────────────────────
ニューヨークのウォール街にある投資会社の副社長を勤めるパトリック・ベイトマンは、友情なんか微塵も感じてない高学歴のエリート仲間たちと、行きつけのレストランのブランドや名刺の柄で競いあい、優越感に浸る上っ面だけの毎日を送っていた。
故に彼はさらなる優越感を求め、夜な夜な市街へ繰り出し、社会的弱者を対象に快楽殺人を嗜むようになっていた。
そんなある日、自分の前にポール・アレンという全てにおいて非の打ち所のない同僚が現れ…。
──────────────────────────────────────────────────────


アメリカン(都会の)サイコ(狂気)というタイトルどおり、本作はバブル景気時をモデルに、その物欲が支配する異常な空間に適応した人々を、快楽殺人者の目線で描いた、一から十まで狂気的な内容で人気を博しました。
主人公が殺人鬼という映画は、スプラッターを除いてもいくつかありますが、大抵、二重人格や統合失調症など、主人公に自覚が無いものがほとんどです。
しかし、本作のパトリック・ベイトマンはちゃんと自らの意思で、自らの美学に基づいて殺人を続けます。
淡々と就寝前の読書を嗜むように、当前のように殺人を繰り返し、何気ない顔で出社する様は、正に狂気の沙汰と言えましょう。

特に自室から逃げる娼婦を仕留めるために、服を着る間もなく押入れのチェーンソーを取り出し、ものすごい笑顔で追いかける「裸チェーンソー」などは、役を通り越してクリスチャン・ベール自身も本気で狂ったんじゃないかと思わせるほどのインパクトを持っています。
しかし、物語が進むに連れ、気付けば快楽殺人で優越感を楽しんでいた彼の方が、現代社会の素顔である何気ない「都会の狂気」によって追い詰められていきます。
凶事の限りを尽くしたパトリック、そして、その狂人すら恐れる温もりなきこの社会、果たして何が本当に狂っているのか、

たっぷり込められた皮肉も狂気的な旨味を醸しだしてくれます。

TSUTAYA