マインドファック『ビッグフィッシュ』
人生なんて まるでお伽話さ
監督 ティム・バートン
脚本 ジョン・オーガスト
出演 ユアン・マクレガー
アルバート・フィニー
ビリー・クラダップ
ストーリー
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ジャーナリストのウィル・ブルームの父エドワード・ブルームは巧みに自分の人生を飾り語る、話し上手であった。
彼はウィルの結婚祝いの席でも、いつものウィルの生まれた日に釣りそこねた巨大な魚の話をして場を盛り上げた。
しかしそんなエドワードに当のウィルは何故いつも嘘偽りの話しかしないのかと不満を持っていた。
そんなある日、エドワードが倒れたと母サンドラから知らせが届き…。
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「脚色」することの素晴らしさを説いた男の「脚色」された奇妙な人生を描いた不思議系ヒューマンドラマ。
余命短いエドワードが冥土の土産とばかりに数々の話を聞かせてくれるわけですが、本作で語られるのは「思い出」でもなければ「寓話」でもない、エドワード自身の人生に脚色を加えた、いわゆる「ほら話」です。
街を抜け共に旅した巨人の話や体が繋がった双子の歌い手の話等、「本当の父の姿」を聞きたいウィルを尻目に、とてもこの世の回想とは思えないエピソードがわんさか語られていきます。
しかし「流石にありえないでしょ」とツッコミを入れつつも、グイグイと引き込まれていく面白みが彼の話にはあります。考えてみれば彼の語る「ほら話」は「空想」という「創作性」に加え「人生」という「リアリティ」を足したものであり、それは人類が今まで「物語」を作ってきた工程と何ら変わりないのです。
そんな「作品」とも言えるエドワードの語りの裏で「父の現実」を探すウィルの存在もまた「ありのままの美しさ」を提示するアンチテーゼの役割を果たしており、決して思想的にも偏っていないところも評価点。
幻想的な空間の中「人生とは何か」という現実的な問題を追究するという形をとることにより、タラタラしがちなヒューマン系のストーリーに上手く娯楽性を混ぜることに成功した、文句なしの名作と言えましょう。