マインドファック映画欄

主にサスペンスやマインドファック系の洋画の紹介、たまに雑記を少々

マインドファック『コンフェッション』

コンフェッション [DVD]

残したものは 視聴率と死体

コンフェッション

2002年公開

監督 ジョージ・クルーニー

脚本 チャーリー・カウフマン

原作 チャック・バリス

出演 サム・ロックウェル
   ドリュー・バリモア

ストーリー
──────────────────────────────────────────────────────
テレビ局で一発でかい企画を作ろうと必死に模索する臨時職員チャック・バリス。
そんな折、彼のもとにジム・バードと名乗る男が「仕事」を持ち込んでくる。
しかし、食いつなぎ程度の軽い仕事を連想していたのとは裏腹に、ジムの提示したのはCIAのスパイになり要人を暗殺する「裏の仕事」であった…。
──────────────────────────────────────────────────────

皆さんはチャック・バリスという人物をご存知でしょうか。

60年代以降のテレビ界において『デート・ゲーム』や『ザ・ゴングショー』といった「一般人」を巧みに利用したスタイル、つまりは現代バラエティの基板とも言える番組をを作り上げた偉大なプロデューサーです。

彼がいなければ日本も「TVチャンピオン」の隠れた逸材合戦を拝めることもなければ、「クイズ$ミリオネア」で強運の数々を観れることもなく、「探偵!ナイトスクープ」を毎週金曜の夜更かしの楽しみにすることもできなかったのです。

本作は、そんな彼が書いた自叙伝をおなじみチャーリー・カウフマンが脚本に起こし、当時役者一筋だったジョージ・クルーニーが初めてメガホンを取った、サスペンス式立志伝です。

当時資金がなく監督が降板して企画自体が頓挫しそうなっていたり、でも唯一先に完成していたチャーリー・カウフマンの脚本の出来が役者の分散を防いだり、勢い余ってジョージ・クルーニーが監督役を引き受けそのままデビュー作になっちゃったりと、いくらでも曰くがある作品ですが、本作の一番の衝撃は原作の「自叙伝」にあります。

ストーリーにもある通り、彼は自叙伝でプロデューサーとしての成功の過程と同時に「CIAで暗躍していました」という非常にバラエティ性に富んだ驚きの告発をしています。

しかし飽くまでも書いたのは、あのチャック・バリス。自叙伝とはいえ、展開を盛り上げるために無茶苦茶な脚色をしても何も不思議はない。少なくとも作中でインタビューされる彼の関係者は全員そう証言しています

ですが脚本のチャーリー・カウフマンは、敢えてこの真偽不明な展開を本作のメインに添えました。チャック・バリスという男の異常なまでの発想、行動力、カリスマは暗殺業という異常な経験があってのものだ、という構成はハチャメチャながら、どこか納得してしまうものがあり、このストーリーを選択したジョージ達の判断は正解だったと言えます。

肝心の内容もチャック・バリス性を出してか、暗いストーリーの割に非常にコミカルに演出されています。当時ブレイク前のサム・ロックウェルによる本物直伝の威厳ある陽気さを感じさせるチャック・バリス役や、舞台演出のようにカメラ外でセットを移動させ、長回しのままシーンを変える技法など、他のノンフィクションものでは絶対に味わえない楽しい雰囲気が作られています。

バラエティに命をかけた男のバラエティに富んだ自叙伝によるバラエティのような映画。これで楽しくないはずがありません

 

『ザ・ゴングショー』の実際の映像。司会はもちろんチャック・バリス。

TSUTAYA